木島 新一

松島湾エリア在住
木島 新一
Kishima Shinichi
プロフィール
宮城県鳴瀬町(現・東松島市)宮戸地区出身、在住。旧鳴瀬町・東松島市職員として30年以上勤務し、退職後も宮戸地区の自然や文化を守る活動を続ける。

地域の魅力を守り、伝えたい。
同じ思いを持つ人たちに出会えた。

木島新一さんは松島湾東部の宮戸島※1で生まれ育ち、島に根を下ろして暮らしてきた。人口が減少しつつある島で※2、土地の文化を守り、発信する活動を続ける木島さんの目に、「つながる湾プロジェクト」の活動はどう映っているのか。

宮戸島の魅力を生かしたい

加藤
木島さんは旧鳴瀬町および東松島市※3の職員として長い間勤められたのですね。宮戸島に関わるお仕事が多かったのですか?
木島 新一
宮戸出張所勤務のほか、観光、生涯学習などに携わる中でも常に島のことを強く意識してきました。特に2007年から2年間は宮戸の市民センター※4の担当になり、立ち上がったばかりのセンターの運営にあたりつつ、宮戸の魅力の生かし方を考えていましたね。「新宮戸八景」※5の整備や史跡誌※6の編集を始めたのもその頃です。宮戸には4つの集落があり※7、それぞれに異なる文化を築いているので、各集落の文化や習慣をまとめようと思ったのです。
加藤
2009年に退職後も、宮戸に関わる活動をしてきたと聞いています。
木島 新一
そうですね。市の観光審議会委員や宮城県の自然保護員など、いろいろな立場で宮戸に関わって、よく地域を歩きました。宮戸島は人口が減っていて、交流人口を増やさないと地域が衰退する一方だから、観光を生かして活性化できないかと考えています。
加藤
ご自身で観光ガイドのようなこともしているのでしょうか。
木島 新一
自分で現地を案内することもありますが、ここ数年は、徒歩や漁船で宮戸をめぐるコースづくりに力を入れています。宮戸だけでなく浦戸諸島※8まで含めたコースもつくりたいのですが、それはまだできていません。
木島さんが考えたトレッキング&漁船コースのひとつ。紫色の線を隔てて左に見えるのが浦戸諸島の寒風沢島。
木島さんが考えたトレッキング&漁船コースのひとつ。紫色の線を隔てて左に見えるのが浦戸諸島の寒風沢島。

宮戸島と浦戸諸島を行き来する

加藤
木島さん自身は、宮戸だけではなく浦戸を歩くことも多いのですか?
木島 新一
はい。4島とも、何回も歩いています。宮戸市民センターの事業で参加者を募って桂島や野々島を巡るような企画も実施しました。
加藤
宮戸から見て、浦戸諸島は身近な地域なのでしょうか。
木島 新一
以前は塩竈の定期船が宮戸まで来ていたので※9、船で塩竈の高校や会社に通う人や、飲みに行く人も多かった。でも定期船がなくなって、行き来することも少なくなりましたね。ただ、寒風沢の漁師さんが宮戸に車を置いていて、日常的に漁船で鰐ヶ淵※10を渡っているようなことは今もあります。
加藤
木島さんとしては宮戸島と浦戸諸島は近いエリアだから、両地域をまたぐトレッキングコースを作りたい。
木島 新一
そうです。宮戸から鰐ヶ淵を渡って浦戸諸島を巡りたいというのはずっと考えてきたことなんです。
寒風沢島(写真奥)と宮戸島を隔てる鰐ヶ淵水道。両島の距離は近いところで数十メートル。宮戸島側から撮影。
寒風沢島(写真奥)と宮戸島を隔てる鰐ヶ淵水道。両島の距離は近いところで数十メートル。宮戸島側から撮影。

「つながる湾」で思いを共有できた

加藤
そのことを、2019年2月の「文化交流市場」のトークイベントでも話していましたよね。
木島 新一
そうですね。そのとき、鰐ヶ淵を活用して浦戸と宮戸のつながりを感じる仕組みを考えている人が他にもいることを知って、嬉しかったのを覚えています。
2019年2月の「文化交流市場」のトークイベント。壇上中央が木島さん。
2019年2月の「文化交流市場」のトークイベント。壇上中央が木島さん。
加藤
木島さんが「つながる湾プロジェクト」の活動に直接関わったのはその「文化交流市場」が初めてでしたね。そしてその年の夏の「鰐ヶ淵をわたる」※11のときには現地ガイドとして参加してくれました。
木島 新一
そうです。東松島市で参加者を募ったり、案内できるスタッフを集めたりもしました。
加藤
「つながる湾」の活動に関わってみた感想を教えてください。
木島 新一
「鰐ヶ淵をわたる」にはたくさんの参加者が集まりました。宮戸を知ろうとか、浦戸と宮戸のつながりを感じようとか、そういう気持ちの人が多いことを実感できました。鰐ヶ淵を活用した取り組みが広がる可能性を感じましたね。
加藤
その後も「つながる湾プロジェクト」の活動には注目しているのでしょうか。
木島 新一
はい。宮戸と浦戸を結びつける取り組みにも期待していますが、「つながる湾」の発行物もいいですよね。できるかぎり入手して、宝物にしています。「松島湾の図鑑」※12も全部持っていますし、その他の資料も、私たちが宮戸や浦戸で活動する際に参考になるものばかりです。今年宮戸コミュニティ推進協議会が発行した「宮戸島読本」※13にも「つながる湾」の資料が転載されています。
加藤
現在「つながる湾プロジェクト」の運営に関わっているメンバーも、木島さんや宮戸の人たちと引き続き連携できることを期待しています。
木島 新一
宮戸も浦戸も人口が減っているし、お互いに行き来して地域を活性化させるようなことができたらいいですね。私自身、「つながる湾」をきっかけに知り合えた人もいます。今後の展開を楽しみにしながら、できることをしていこうと思っています。
<脚注>
  • ※1 松島湾の東に位置する島。東松島市に属する。本土(東松島市野蒜地区)との間は潜ヶ浦(かつぎがうら)水道で隔てられているが、橋がかかっているため車で行き来できる。
  • ※2 宮戸島の人口は、東日本大震災前に1000人弱だったのに対し、2020年11月には471人となっている。
  • ※3 現在の東松島市は2005年に桃生郡矢本町と桃生郡鳴瀬町の合併によって発足した。
  • ※4 2007年4月開設。2011年の東日本大震災で被災し、プレハブでの運営を経て2017年に「宮戸地区復興再生多目的施設・あおみな」に移転した。
  • ※5 宮戸地区の観光活性化のため設定された8ヶ所の景勝地。旧鳴瀬町誌に記載のある「宮戸村八景」に着想を得た木島さんらが選定し、2009年10月に発表した。大高森(里浜地区)、嵯峨見台(室浜地区)などがある。
  • ※6 木島さんらが宮戸の自然・歴史・文化を伝えるため作り始めた。収集した資料が東日本大震災で流失したが、のちに結成された宮戸郷土誌編纂委員会が編集作業を続け、2020年、「未来に残したい島の記憶 宮戸島読本」(発行・宮戸コミュニティ推進協議会)として発行された。
  • ※7 月浜、大浜、室浜、里浜の4集落。「四ヶ浜」とよばれる。
  • ※8 松島湾湾口部に並ぶ島々。塩竈市に属する。うち有人島は桂島、野々島、寒風沢島、朴島の4島。
  • ※9 塩竈の観光桟橋と桂島、野々島、寒風沢島、朴島の4島とを結ぶ定期船。かつては宮戸島まで行き来していたが、宮戸−朴島間が1992年7月1日に廃止となり、現在の航路となった。
  • ※10 わにがふち。寒風沢島と宮戸島を隔てる海。
  • ※11 「つながる湾プロジェクト」が2019年8月1〜3日に実施したイベント。用意した渡し船で鰐ヶ淵を渡り、寒風沢島と宮戸島の距離感や周辺の地形を体感するもの。3日間でのべ94人が参加した。
  • ※12 2016年度以降、「つながる湾プロジェクト」が制作・発行した「松島湾のハゼ図鑑」「松島湾の牡蠣図鑑」「松島湾の船図鑑」「松島湾の遺跡図鑑」。
  • ※13 ※6の「未来に残したい島の記憶 宮戸島読本」を指す。

区切り

インタビュー日:2020年10月27日
インタビュー・まとめ:加藤貴伸

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